古着の活用こそサステナブルでエシカルなファッション消費活動
ファッションは
喜びであり夢である一方で・・・
ファッションは人間の身体を覆うだけの役目ではなく、ある人にとっては自己表現であり、ある人にとっては心を豊かにしてくれるものです。
自分を着飾ることで外見だけではなくて、内面にも大きな影響を与えてくれる。
ファッションに人生のすべてを捧げこの世に新たな価値を創造するチャレンジを続けるデザイナー、そんなデザイナーを夢見る若きクリエイターが世界中に多く存在します。
ファッションによって人生が救われた人。
ファッションこそが生きがいの人。
しかし、ファッションを愛する人が多い故に、胸が痛む現実があります。
それは、ファッション産業は地球の環境に悪影響を及ぼす2番目に大きな産業であるということです。
「サステナブルファッション」
「エシカルファッション」とは?
近年注目されている「サステナブルファッション」や「エシカルファッション」。
サステナブル(Sustainable)はsustain(持続する)とable(〜できる)からなる言葉。
「持続可能な」「ずっと続けていける」という意味があります。
エシカル(Ethical)は、「倫理的」「道徳上」という意味があります。
「サステナブルファッション」「エシカルファッション」
わかりやすく言うと、服がつくられる過程で地球環境や動物の権利を守り、生産に関わる労働者の生活もしっかりと保障するなど、環境・社会に配慮したファッションのことです。
人や社会、環境、地域に配慮したものやサービスを選ぶサステナブルでエシカルな取り組みへの社会の意識が高まっています。
2015年9月国連本部において「国連持続可能な開発サミット」が開催され、加盟193ヵ国の全会一致で採択された「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」。
ラグジュアリーブランドの
エシカルな取り組み
2021年4月、アレキサンダー・マックイーンとバレンシアガが毛皮(リアルファー)の使用を廃止することを発表しました。
2018年春夏コレクションからリアルファーの使用を廃止しているグッチ。
プラダやヴェルサーチェ、シャネルなど多くのブランドがコレクションでのリアルファーの使用を廃止しています。
ステラ・マッカートニーの功績
現在のエシカルファッションの先駆け的存在が21世紀の幕開けと同時の2001年にコレクションデビューをしたステラ・マッカートニーです。
ヴィーガン家庭で育ち、エコロジストとしてデビューコレクションからエシカルな信念を貫くステラ・マッカートニー。
「デビュー当時、私の考えは型破りすぎて軽視されていたの。でも自分のブランドでは妥協したくなくて、どう思われようと信念を貫こうと決めた。ファッションのためにどれほどの動物が殺され、環境に悪影響を与えているか・・・・。サステナブルな視点を最初から訴えていたのは、当時は私だけだった。今はどのブランドも関心を持ち始めたけど、さらに責任と理解を深めるべきだと思っているわ。」
ELLE JAPON 2018年8月号より
動物の本物の毛皮こそ価値があり、化学繊維のフェイクファーはチープなもの、リアルファーが買えない人の代替品という価値観がまだまだ根強かった頃から、自身の信念をブランドコンセプトに反映し、ファッション業界・産業にチャレンジを続けてきた。
その結果、どうでしょう。
偽物の安価な「フェイクファー」は「エコファー」への名称変化によりステータスがアップグレードされた。
ステラ・マッカートニーのデビューから遅れること10年、ブランドによっては20年かかって、これまでに多額の収入を得てきたリアルレザーやファーからの脱却がラグジュアリーブランドでも始まった。
ファッションブランドを
持続させるということ
ファッションブランドには多くの人が携わります。
ブランドの顔としてデザインの責務を担うクリエイティブディレクター。
クリエイティブディレクターを支えるデザイナーアシスタント、パタンナー。
生産過程でクリエティブディレクターの表現を実現する職人、世界中の工場の労働者。
布や繊維の開発者に調達をする仕入れ担当。
そして生産された製品を販売する経営・マーケティング部隊に世界中に何千店舗と存在する直営店の販売員。
社員の生活を守るために利益を最優先するのは、資本主義社会において企業の責任でもあります。
それでも、過去の慣習からもたらされる利益よりも、社会の変化に伴い未来の価値観に合わせた戦略・取り組みが必要となったのが、エシカルファッションへの転換期の今なのでしょう。
消費者の私たちは?
今を生きる人間として、未来になにを残せるか。
アーティスト、デザイナーは自身のクリエイティビティを表現するのが使命なので、新たなデザインをファッション製品としてこの世に提供する。
では、ファッションを享受する消費者の私は?
製品開発過程で環境資源を最小限に抑え、生産者・労働者の賃金や労働環境と動物の権利を守り、透明性の高いエシカルファッションブランドの製品を買う。
本当にそれだけがサステナブルな取り組みでしょうか。
現存のアパレル企業やメディアは新商品を買ってもらわないと困ります。
毎シーズン新作を発表することで購買意欲を掻き立てます。
それでもふと究極を試したくなる。
“今後一切、ファッションアイテムが生産されなくても困らないのでは?”、と。
過去に生産されたファッションアイテムを購入し、次の世代が受け継いでいく。
新品を買わないことで、僅かにでも大量生産・大量消費にストップをかけ地球への負荷を軽減させる。
これも「サステナブルファッション」「エシカルファッション」の形の一つではないでしょうか?
だってね、服は余っているんです。
日本で毎年捨てられる衣服の量は約100万トン。
2018年には英国ブランド「バーバリー」が、ブランド価値を保つために年間2860万ポンド(約38億円)分の売れ残り商品を処分していたことが明らかになり、環境保護団体などから激しく批判された。
フランス西部の都市ルーアンで、有名メンズ・ファッションブランド「セリオ」の店のゴミ箱から、カッターで切り裂かれた服が発見された。これに抗議をした女性のSNSへの投稿が、フランス国内に衝撃を与えた。
同じく2018年、H&Mでは43億USドル(約4765億円)相当の未販売の洋服やアクセサリーが倉庫に眠っていたという。 デンマークのテレビ局TV2の番組は、スウェーデンの大手ファッションブランド「H&M」が、2013年から毎年12トンほどの売れ残りの衣類を焼却処分していると報道した。
焼却施設場所はデンマークにある都市ロスキレ。
テレビ局のジャーナリストの取材では、値札がついた新品のジーンズなども焼却物として発見された。
ファッションは私たちの人生にあらゆる彩りを与えてくれるが、その裏には環境破壊や労働者、動物からの搾取などがあるかもしれない。 私たちは消費者として、できるだけサステナブルなものを選びエシカルな人間でいたい。 その選択の一つが古着の活用だと強く思う。