【天狗】価格を決めるのはあなた!若者に寄り添い、人情味あふれる“価格がない”原宿の古着屋。
多くの古着屋が店を構える、渋谷〜原宿の間のキャットストリートすぐ近くの裏路地に2021年に誕生した古着屋【天狗】。
Vintage.Cityアプリに登場して以来、多くの人の頭がハテナマークになったでしょう。
無理もありません。
だって、Vintege.Cityアプリ内の天狗のページを見るとこんな表示が。
え?価格のない店舗?
そう、この古着屋【天狗】はおそらく日本唯一(世界でも唯一かも?)の”価格がない古着屋”なのです。
アプリの性質上、値段は50万円と表記していますが、本当の値段は天狗のスタッフの方とお話し合いをして決めていくシステム。
それ故に近寄りがたさを感じる方を抱く人もいるかもしれません。
しかし、”その時代やデザインに込められた背景のストーリーを知るとさらに面白さが増す!”のが古着の魅力!
実際に直接会って、コミュニケーションを持ち、話しを聞いてこそ【天狗】の思いを知ることが出来る!
PR担当のEIJIROさんと店長のKMさんにお話しを伺いました。
“値段のない古着屋”という他にはない特徴について聞く上で、まずは天狗についてと天狗ヒストリーを聞かせてください!
店名の由来を教えてください。
KMさん:自意識過剰、天狗になるが由来です。空想の生き物の天狗の鼻高々というイメージと重ね合わせて、うちの商品を着て外に出た時には、”これが自分だぜ!”とイケイケな感じになってもらえたら嬉しいです。
インパクト大な真っ赤な壁の空間にエッジの効いた服。空間のコンセプトは?
KMさん:内装のコンセプトは、ロンドンの売れないパンクバンドが使っているライブハウスです。そこに店名にもなっている天狗の住処として、神社の砂利や竹などの日本的なテイストが融合しています。
自分たちで赤のペンキで壁を塗って、最初はキレイに塗ろうと思ったんですけどね。
床に垂れたり、それを靴で踏んで床も所々赤くなったりで、途中からはもうあえてムラがある感じに塗って仕上げました。
これから外国人観光客が戻って来たら大興奮しそうです!
KMさん:美容師の知り合いとかから、撮影で使わせてと頼まれることもありますね。笑
2021年10月15日にこの原宿に店舗をオープンした経緯を教えてください。
EIJIROさん:3年前からアメリカや海外で買い付けをして、やはり古着が好きで古着屋を開きたい気持ちからやっと昨年オープンしました。
当初はもっと早くオープンしたかったけど、コロナのことがあり、一方でコロナによって良い物件にも出会えて、僕たちのエッジの効いたぶっ飛んだアイテムを見せていくのに最適な原宿にオープン出来ました。
3年前から取り扱う古着のコンセプトやテイストは決まっていたのですか?
EIJIROさん:UK、ロックを感じさせるアイテムをベースにあとはバイヤー担当が独自のインスピレーションで集めてきています。
バイヤー担当が感じる、”何かいい”。何がいいと言葉では表現しきれない心惹かれた、70年代から90年代のちょっと変わり種や、面良しのこれ一着来てたら決まるじゃん!というアイテムです。
50年-60年代のヴィンテージもありますが、気軽に着られて買えるネクストヴィンテージやレギュラー古着がベースです。
原宿には、年代ものの希少な海外ヴィンテージを扱う老舗がたくさんあるので、だからこそバイヤー担当の感性によって天狗の色が決まりますね。
EIJIROさん:フィーリング&バイブスです。笑
客層的にも若い方が多いので、手に取りづらい値段のものはあまり置きません。
海外古着の他には、PHENOMENON(フェノメノン)というブランドをメインで置いています。
PHENOMENONは現在ブランドが復活しているけど、うちが置いているのはオオスミタケシ氏が生前にデザインしたアーカイブのみで、日本一の取扱数です。
PHENOMENONはどなたかがお好きだったのですか?
KMさん:バイヤーがPHENOMENONが好きだったし、僕も元々どっぷりはまって着ていた世代なので集めていました。
僕たちは28歳なんですけど、少し上の世代には熱狂的ファンの方が多くて、全国の古着屋でPHENOMENONのアーカイブを探し回り、うちに来てくれると数の多さに驚かれます。
それほど二次流通でも見当たらないものなので、現在のPHENOMENON+MCMの生産管理の方とかも来たりします。
よく集めましたね!
KMさん:アウターとかは数が少なくなってきていますが、Tシャツなどはまだまだ出していないものがたくさんありますよ。
希少なものを販売して手から離れていくのは葛藤しますね。
EIJIROさん:僕らも泣く泣く。でも、欲しい方の元に受け継がれていってほしいです。
聞かないわけにはいかない、”値段がない”ことについて。本当に全て話し合いで決まるんですか?
KMさん:「これいくらですか?」と聞かれたら僕たちは「いくらくらいがいいですか?」というやり取りが最初です。
僕らも大体このくらいの価格で売りたいというのはあるんですけど、その金額は出せないという方とは話し合いで決めていきます。
高値を言った方だと、「いや、それは高いからもうちょっと落とせるよ。」と、2万円と言われたジャケットを8,000円で買ってもらったりとかもあります。
EIJIROさん:服・古着のことを知ってもらいたいという気持ちからなんです。これは何年代のものだよ、とか、こんな経緯で作られた服なんだよ、と会話をして知ってもらい、だから2万円ではなくて8,000円くらいなんだよ、とお伝えしています。
私が知る限り、このシステムのお店は初めてです。
KMさん:僕達も古着屋をたくさん回ってきていますが、無いですよね。
学生の時に古着を好きになって、古着屋に行って手に取ったアイテムの値札を見て、「2万円か。高くて買えないな。」と諦めることはよくありました。
1万5千円だったら買えるのにな、と思っていたとしても、黙ってそっとラックに服を戻したらお店の人もその気持ちに気づけないですよね。
でも、うちだったら、「1万5千円で!」と言って交渉することが出来ます。
お客様も店側も、無理ない程度で頑張れるラインで買い物が出来るというのが、僕達が学生の頃に出来なかったからこそしてあげたいです。
店側で想定している価格より高く言う方が多いですか?それとも低く言う方が多いですか?
EIJIROさん:この渋谷原宿の商圏にしてはうちは安い方なので、実は高い値段を言われる方が多いです。なので安く売っていることが多いです。
KMさん:結構攻める子もいて楽しいですよ。年齢を聞いて、18歳なんですよ、と言われたら僕達も「がんがん攻めていいよ!」って言っちゃいます。笑
喜んでくれる方がほとんどなので、原宿の裏道のお店ですけど、”楽しかったんで友達を連れて来ました!”と再訪してくれるリピーターの方も多いです。
EIJIROさん:上手い子とか、「これとこれセットにして◯◯円にしてください!」と言う方も結構います。
20歳前後の若さでその交渉力はすごい!
KMさん:それでどうしても安く言われた場合、うちはトランプを出してきて、トランプのゲームで勝ったらいいよ、とか。”負けたら、ごめん、2000円上乗せさせて。”という塩梅でやっています。
今回は安くしてもらったから、次は稼いでお金を貯めてバーンと買える男になって帰ってくるぞ!とモチベーションにもなると思います。
EIJIROさん:飲み会の前に、トランプの練習だけをしに来る常連さんもいます。笑
次の買い物の時に僕達に勝つために。そういうの全然大丈夫です。
KMさん:全部楽しい遊びの延長です。服を買うのも遊びだし、トランプするのも遊び。
EIJIROさん:”服を買った”だけではなく、あの時トランプをして買った服となったら、何年経っても1つの思い出として残ると思うんです。ストーリーのある買い物経験を楽しんでほしいです。
日本では決定事項に従うことに慣れ、交渉したら状況を変えられるかもしれないという希望を持つ経験が本当に少ないので、実は教育的にも素晴らしいと思います。
KMさん:いい意味でグローバル感覚の経験だと思います。若い時から古着屋での交渉に慣れていたら、結果的に就職活動のときにコミュニケーション能力に長けたりとか、どこかで活きるかもしれませんし。
一か八か言ってみよう!やってみよう!という心意気が大事!
自身もそうであった若い学生の立場を考えてのシステムなんですね。
KMさん:うちの服を着て天狗になってバイブスぶち上げてほしいんです。
9,000円だと思って見ていたものが7,000円で買えたら、その日の夜ご飯においしいものを食べられたり、別のことにお金を使えます。
その2,000円を元手にちょっとずつ貯めていって、また一着買えるとか。
可能性を広げてほしい、そして天狗に来たら楽しんで帰ってほしいです。
値段はなく全て交渉、とだけ聞くと誤解を招くことがあるかもしれませんが、皆さんの学生の方への優しさ・思いやりからという事を知ってもらいたいですね。
KMさん:マイナスイメージを持って来られたお客様は話してみて印象が180度変わりました、と言ってくださる方も多いです。全然イメージが違いました、と。
エッジが効いた店と古着のラインナップで、実は私達もちょっと構えて来ました。笑
でも実際にKMさんとEIJIROさんとお話しをすると、とても穏やかで明るく笑顔の多い方でした。
KMさん:全然、その辺にいるやつらなんで。笑
僕らは単純におしゃべりが好きです。僕はしゃべりたくて仕方ない。めっちゃおしゃべりなんで、何も買わなくてもいいからしゃべりに来て!笑
バイブスぶち上げる、そして天狗視点で知ってほしい古着の魅力について教えてください。
KMさん:古着はカルチャー、歴史の教科書だと思うんです。例えばメッセージTシャツだと、”なんで当時のアメリカ人はこのプリントにしたんだろう”、と疑問を持ち考え、当時の歴史・カルチャーの背景を自ら調べたり古着屋で話しを聞くことを楽しむようになったら、教科書にお金を払っているようなものです。
EIJIROさん:このバンドTシャツだと、当時の人がライブ中にかっこよく見せるために袖を切ったんだろうな、と計算ではないカットや開いた穴から当時のカルチャーを知れるのが古着の良さです。
KMさん:これはブラジルのサッカーチーム、コリンチャンスのユニフォームです。レプリカではなく、コリンチャンス下部組織のプロの卵の10番の選手がガチで試合で来たものです。天狗のディレクターが元々サッカーをやっていて、ブラジル遠征に行った時にユニフォーム交換したものなんです。
選手が本当に使っていたものというのが面白いですよね。
試合中のフィジカルプレイでできた引っ掻き跡や掴まれて伸びた襟元とか、古着だから味になるところがいいです。
最後に天狗として個人として今後していきたいことを教えてください!
EIJIROさん:僕たちは面白いこと、楽しいことが好きです。お客様には面白く楽しんでほしいです。
KMさん:絶対に何か買わなくてはいけない感じではなく、良いのが無ければフラッと帰れる心地良い雰囲気を作っていきたいです。
天狗に携わるメンバーはそれぞれ好きな古着のテイストが違うので、いずれは各自の店を持ちたいよね、とは話しています。
僕はデニムがすごく好きなので、デニムとよくわかんないTシャツだけのお店とか、テイストを絞った自分のエゴがもっと出る店が出来たらいいな。
楽しみながら仕事をしている少し年上のお兄さん達の存在は、若い学生にとって大きな励みになり勇気づけられると思います。
天狗に対して、先入観で何となく近寄りがたい印象を持つのはもったいない!
バイブスぶち上がる古着の買い物体験を皆さん、是非経験してみてください!
天狗
Open:13:00~21:00
istagram : https://www.instagram.com/fach.tengu1015/
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エディター:上月マキ
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フォトグラファー:白永崇大
ファッションスナップを中心にアーティスト写真、ライブフォトなどを撮影する傍ら、YouTubeチャンネルのカメラマンを担当するなど多岐に渡って活動中。
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