下北沢に進路を取れ!「ひっくり返したおもちゃ箱」 UTA(ウタ)の素顔に迫る
アーティスティックな街並みの下北沢は、東京の中でも独創的な文化が広がっています。特にスタイリッシュな店も多く、その筆頭が今回紹介するUTAです。
おしゃれ上級者なら一度は足を踏み入れたことがある古着屋で、ロスで仕入れたという高級ブランドから国内ブランドまでがズラリと揃います。
80年代から90年代のブランド古着に興味がある、個性的なフアッションが好きなら一度は足を運ぶべき!
下北のUTAは3店舗目だそうで、まさに全国をまたにかけたおしゃれ番長店。
今回は笑顔の素敵なオーナー池田さん夫妻にお話しを聞かせていただきました。
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店内に入って目に入るのが、天井にディスプレイ?された帽子なのですが(笑)帽子は売り物ですか?
池田さん(奥様)「そうです(笑)初めてのお客様は、これ見てドン引きしてますね…。でも、中毒性があるのか…何度もくるうちに慣れてしまうようです。」
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圧が凄いというか、落ちそうな感じもしますけど。圧巻ですね!私も帽子は好きなので、ちょっとワクワクしてきました。
池田さん(奥様)「ウフフ、そう言ってもらうと、見せたくなるじゃないですか…とっておきのやつ。」
そう言って、見せて頂いたのは某ロイヤルファミリーのドレスコードに欠かせない「ファシネーター」。羽根飾りとレースがおしゃれで、シンプルなパンツスタイルに合わせてもしっくりきそうな感じです。
その他にも「こんなのもありますよ♪」といいながら、出てくる出てくる帽子の数々。天井以外にも帽子がたくさんあって、見ているだけでも楽しくなってきます。
天井にもファシネーター以外に、チャップリンでお馴染みの山高帽やチロリアンハット、フェドーラ、ポークパイハット、ボーラーハットなどがありました。日本では、ワッチキャップやベースボールキャップを被っている人は見かけますが、本格的なフォーマルハットを被る人は少ないように思います。
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色んな種類がありますが、帽子目的で来店されるお客様も多いですか?
池田さん(奥様)「結構、ご年配のお客様が多くて…皆さんおしゃれなんですよ。服に合わせて帽子もコーディネートされて帰る方も多いですよ。」
帽子は紫外線から自分を守るだけでなく、自己表現のために楽しみとして身につける人もいます。
年配の人は「老いを隠すために帽子を被る」などの噂もあるようですが、UTAで帽子を選ぶ年配女性達は、「洋装には帽子を被るのが礼儀」もしくは「お洒落を楽しみたい」気持ちが強いように感じます。
それは、UTAのかもしだす「居心地の良さ」が関係するのかな?とインタビューをしながら思っていました。まるで、自分の家のクローゼットの中から服を選ぶような、自然さがこの店には広がっています。
それは、驚くほどに狭い通路であったり、落ちてきそうなほどの帽子が下がる天井にもあるのでしょうが、「昔の日本の家」にある馴染みやすさが居心地の良さに繋がっているのではないでしょうか。
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帽子もインテリアに1つのようですが、レイアウトや店内にこだわっているポイントはありますか?
池田さん(奥様)「70年代の田舎の百貨店とか、80年代に見た裏原宿のショップ、90年代も高円寺や下北沢、ロンドンの小さな古着屋達がイマジネーションのベースになってると思います。特に下北沢駅前劇場内にあったチョイスさん(今はありません)は、古着で洞穴ができてたんです(笑)床から天井まで古着がびっしり積まれていて、どうやって見るかもわからない中、店員さんが私に似合う服をさっと取り出してくれるんですよ。神業(笑)。あとは、フランス映画のアンニュイで非日常的・幻想的な空間。雑貨が多いのもデコラティブでアーティスティックな印象になるからですね。」
池田さん(ご主人)「あとは、好きなものをどんどん集めていたら、店中に商品がパンパンになっきて(笑)。とにかく、自分達が好きでいいなって仕入れて」
池田さん(奥様)「帽子は頭に被るから天井でって感じ。」
古着を見せる店が多くなる中、UTAのように古着が店と一体化したようなレトロな雰囲気は退廃的で非日常的空間に感じます。
顧客の年齢層がやや高めというのも、昔ながらの古着屋そのものの空気が居心地の良さになっているのかもしれません。
取り扱う商品が多国籍なこともありますが、生命の鼓動やエキゾチズムを感じます。音楽でいうと、ラヴェルの「ボレロ」がイメージでしょうか。個性的で、ワクワクドキドキが止まりません。
好きなものにこだわったらできあがったのが下北沢UTA
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これだけを集めるのは大変かと思いますが、帽子はお好きなんですか?
池田さん(奥様)「今は被ってないですけど、昔はよく被っていましたね。下北沢は学生時代によく遊びにきていて、その時も帽子被ってたと思います。UTAは長野の松本が1店舗目で、そちらはパルコに店があるので雰囲気が違うんですけどね。やっぱり、自分が好きな街というか…下北は思い入れがあって。ここで勝負したい!ってここにもオープンしたんです。シーズンで帽子は入れ替えるので、店内の雰囲気も変わったりして。それも楽しんでいます。」
店内には帽子だけでなく、アクセサリーやスカーフ、靴などもたくさんあります。ここにくれば、トータルコーディネートが完成するんじゃないか!と思うくらいに商品が豊富。
中でも目を引くのは高級ブランドのスーツやワンピースでした。とにかくニッチな店内の中で、そこだけがキラキラ光っているというか「あれ?なんで」みたいな不思議な光景が広がります。
バブリーな香りのするファンクなアニマル柄のワンピース。ここ数年、日本でもアニマル柄のブラウスやパンツ、バッグなどはトレンドでしたがここまで大胆なワンピースは珍しいです。
海外セレブが着るような個性的なワンピースやレトロでクラッシックな半袖トップスが目に止まります。こちらはフランスのデザイナー「エマニュエル・ウンガロ」の半袖トップス。
パワーショルダーは、80年代を代表するトレンドマークで「働く女性」のためのパワフルなフアッションとして話題になりました。マイケルジャクソンの衣装や故ダイアナ妃のアイコンでカルチャー現象にもなっています。
このパワーショルダーは、2021年トレンドでもありオーバーサイズの着こなしに使われています。80年代と比較すると控えめな感じで、カットソーやワンピースなど、女性らしい甘めのアイテムに使われています。
このように、トレンドプラスに使えそうな掘り出し物が見つかるのもUTAの魅力。今までにない古着の世界の扉を開きたい人は一度お店に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
古着好きに年齢は関係なし!欲しいものや好きなものは突き詰めてチョイス
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パワーショルダーやアニマル柄など、トレンドを意識したアイテムも多いようですが、仕入れには何かインスピレーションになるものはあるのですか?
池田さん(ご主人)「仕入れはすべて彼女のセンスです。自分は販売専門で(笑)」
池田さん(奥様)「自分が見て気に入ったものを仕入れています。下北はお客様の年齢層が高いので、シックなものやエレガントな商品がメインですね。7割ぐらいはカジュアルなんですけど、他の店とは違う感じかな。」
池田さん(ご主人)「全然違いますよ。若い人向けの可愛い感じは松本店に集約しています。ここは80年代から90年代のバブル時期に人気のあった高級ブランド何かもあったかな。」
池田さん(奥様)「ディオールとかシャネルとか…自分で仕入れたのもあるんですけど、お客様から「預かって」とか言われたのが売れることもありますね。「着なかったから」とか…高級ブランドのスーツとかコートなんかも。当時の人がみたら、怒るくらいに安いです!そして売れます。」
ブランド古着も多いのですが、鮮やかな色のワンピースやプリントブラウスなど、カジュアルコーデにワンポイントで使いたくなるキュートなアイテムもたくさん並んでいて、見ているだけでもワクワクしてしまい店内です。
通路が狭いので、4~5人店内に入ってしまうと身動きが取れなくなってしまうとか。それもUTAの魅力の1つで、道を譲り合って歩くうちにめぼしいアイテムに出会うこともあるようですよ。
UTAの客層は、他の古着屋と比べるとかなり高め。50代から、上は70代のおしゃれマダムが平日休日問わずに訪れるそうです。
1986年12月から1991年にかけてはバブル全盛期。当時のOLだった女性は、平均して50代後半から60代ですから、UTAのおしゃれな大人の古着がぴったりマッチするのかもしれませんね。
中にはお孫さんと一緒に買い物に来られる顧客もいるようで、若い人にはアクセサリーやスカーフなどの小物が人気との事でした。
本来はお母さんとやるはずだったUTA
池田さん(奥様)「本来は、自分の母親と一緒にやろうと店を開いたんです。」
大学卒業後、グラビアのスタイリストをしていた池田さん(奥様)。松本に路面店で始めた
頃は、デコラティブな感じのお店で取り扱う商品もド派手なものが多かったそうですが、意外なことにお客様がやってきて商品がどんどん売れるようになったそうです。
その後は仕入れに明け暮れるようになり、ご主人にサポートを受けながら翌年に飯田市に出店。その後、自分らしくすごせる下北沢に凱旋。松本パルコは4年前に出店、若い女性向けのカジュアルな古着をメインに揃えています。
下北沢は主にご主人が管理し、池田さん(奥様)は仕入れや松本を担当。「松本には信頼できるスタッフがいるので安心しています」と笑顔で話してくれました。
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学生時代から古着が好きでしたか?
池田さん(奥様)「フランス映画の影響ですね。 ジャン=ジャック・ベネックス監督が大好きで、もう映画は何度も見ました!とにかく、フランスのアンニュイな雰囲気にガツンとやられて、車はシトロエンに乗りたいとか。アニエスベーやゴルチエ、ヴィヴィアンも好きでした、今でも好きです!ちょっと個性的なアイテムが好きなので、仕入れでも他にはなさそうな商品を選んでしまいます。」
個人的には私もジャン=ジャック・ベネックス監督は大好きです。映画「ディーバ」「ベティ・ブルー」は感銘を受けましたし、フランス独特の「個」を考えさせられました。フランス映画は、ロマンティックなんですが人間臭い一面もあって…。それを美しい衣装とアングルで作るのですからズルいですよね。
そんなフランス映画に魅せられた池田さん(奥様)が仕入れるのは、エッジの効いた大胆なデザインや柄の古着が多いようです。
どこか懐かしいUTAおすすめのコレクション
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どこかノスタルジックな香りのするUTAの魅力は、他の店にはないラインナップです。ここからは、UTAおすすめのアイテムを何点かご紹介します。すべて、オンラインでも購入できますので気になった人は、UTAまでお問い合わせくださいね。
ヴィンテージストローハット
フランス映画にでてきそうなブリムが真っ直ぐでシルエットが美しい帽子です。最近のデザインとは違いシャープで美しい女優帽。
大胆な柄のワンピースに合わせてリゾートにお出かけしたり、シャープなパンツスタイルにも馴染みます。
機能性の高いストローハットは、夏なると天井いっぱいに広がります。帽子も試着可能なので、気になる帽子が売り切れるまえにUTAでチェックしてください。
マルニサンダル(Marni)
イタリアのラグジュアリーブランド「マルニ(MARNI)」は、毛皮や革製品をメインに展開しています。建築的なシルエットが特徴で、H&Mやポーターなどとコラボした商品も日本で話題になりました。
定番のクロスベルトサンダルは、エナメル仕様のスタッズ使い。洗練されたフォルムの中に遊び心が感じられます。裸足でワイルドに履いてもいいのですが、ソックスやカラータイツを合わせてインパクトを出してこなれた印象に。
この他にも、たくさん靴が揃っているので、気になる靴はどんどん足を入れて履き心地をチェックしてください。
ジャン・ポール・ゴルチエ カットソー
ゴルチエが得意とするアバンギャルドなゼブラ柄のカットソーです。襟、袖繰り、脇に切り替えを入れることで立体感を生み出しています。
ゴルチェはUTAの人気ブランドの1つ、池田さんの好きな映画監督ピーターグリナウェイが「コックと泥棒、その妻と愛人」の衣装を手がけたことでも思入れが強いのだとか。
80年代に一世風靡したフランスのブランドでカトリーヌ・ドヌーヴやキム・カーダシアン、そして80年代ポップスの女王マドンナが舞台衣装にもしたことでも有名です。
また、レディーガガが2009年のMTV ビデオ ミュージック アワードで黒のゴルチエドレスにゴールドマスクで登場しました。多くのセレブに愛されたゴルチェですが、2020年春夏オートクチュールコレクションを最後に引退。
奇抜で想像力を掻き立てる非日常的ゴルチエを、日常に取り入れる至福をUTAで楽しみましょう。
シャネル ジャケット
大きなポケットがインパクトありの、女性が永遠に憧れるシャネルのジャケット。計算されたラインは、どの角度からみてもボディラインを美しく見せます。
UTAでは、ハイブランドやDCブランド「だけでなく、伝統的な職人技が光る革製品なども豊富に取り揃えらていました。どれの状態もよく「このお値段でいいんですか!」といいたくなるくらいお手頃です。
海外からもバイヤーが買い付けにやってくると言えば、納得の品ぞろえに数々のヴィンテージを目にした筆者も脱帽です。
池田さん(奥様)「UTAに遊びにきた人には、非日常体験してほしいというか…びっくりさせたい気持ちが強いです」
池田さん(ご主人)「Vintage.Cityに登録してから、年齢層が幅広くなりましたね。色んなお客様がUTAに興味を持ってくれて、問い合わせも増えました。Baseもやっていますが、Vintage.Cityはダイレクトに反応があるのが嬉しいです。」
池田さん(奥様)「サイズの問い合わせとか、商品の在庫確認とか気軽に問い合わせてもらいたいです!欲しい雰囲気とか言っていただけたら、こちらからも色んな商品を案内できますしね。」
人との繋がりを大切にしたい。だから年齢層とか、どんな人が何を買っていくかは関係ない。UTAと縁があって、狭いけれど時間をかけて欲しいものを選んで、お会計を済ませた後の満足そうなお客様の顔を見るのが楽しい。
入った瞬間に「ギョッ」とした顔のお客様が、笑顔を持ち帰っていく。そして「また来ちゃった」と笑顔を運んでくれる。
UTAは新しい自分を発見する場所でもあり、自分だけのお宝を発掘できるおもちゃ箱のようなお店でした。