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【高円寺 Belphegol】デザイナー目線で選り抜かれた極上のアイテムたちに出会えるヴィンテージ・セレクトショップ

1 year ago3,725 views

ヴィンテージファンの間で、「こだわりの逸品に出会える名店」と知られるショップが高円寺にあります。

場所は、新高円寺通りの中ほど。のどかな商店街に溶け込むように佇むそのお店の名前は、「Belphegol」です。


「オープン当時、共に店を立ち上げた友人が神話にハマっていて。Belphegolという店名は、『七つの大罪』のうちのひとつ、『怠惰』の化身のことなんですが、なんとなく自分たちっぽいよねということで名付けました」

そう話すのは、オーナーの染谷翼さん。店名の由来となっているダークな世界観とはまるで無縁の、明るい笑顔で迎えてくれました。

一級の目利きであるだけでなく、デザイナーでもある染谷さんに、開店の背景やこだわり、ヴィンテージに対する想いについて、お話をうかがいました!

デザイナー視点でお客様に寄り添う。“触感”と“着心地”を重視したアイテム選び

——そもそもヴィンテージに興味を持たれたのはいつ頃のことだったんですか?お店を始めた経緯とあわせて教えてください。

染谷さん:そもそも洋服に興味を持ち始めたのは、中学2年の頃。古着好きだった友人の影響を受けたのがきっかけです。高校生になると、ラフ・シモンズやジュンヤ・ワタナベなどデザイナーズブランドに夢中になり、バイトして貯めたお金をぜんぶ洋服につぎ込んでいましたね。

高校3年くらいからヴィンテージにハマり始め、大学在学中に初めてアメリカに渡って、買い付けしてきたものをイベントなどで売るようになり、2019年の3月に大学を卒業するのと同時にこの店をオープンしました。

——店内には、ヴィンテージアイテムだけでなく新しい商品も置かれているようですが、これは?

染谷さん:ヴィンテージと並行して、オリジナルブランド「Verthandi」も展開しているんです。デザインから生地の選定など、ディレクションの工程すべてを僕が担当しています。

実は「デザイナーになりたい」という気持ちは中学のときからあって。本気で職業として意識し始めたのは、大学生のとき。たまたまテレビでスズキタカユキさんの密着ドキュメンタリーを観たのがきっかけでした。

「自分がやりたいことはこれだ」と思って調べたところ、当時たまたまインターンを募集していたんです。すぐに応募し、そのまま2年ぐらい下働きしながら、いろいろ学ばせてもらいました。

——デザイナーを志す上で、ヴィンテージは染谷さんにとってどのような存在なのでしょうか。

染谷さん:かつての洋服は、使い捨てる前提で作られていません。そのため、とても仕立てが良かったり、今では考えられないような良質な生地が使われていたり。現代の洋服にはない魅力があります。なので、デザインをするためには、まずヴィンテージを知らなければいけないという思いがずっとあったんです。

——なるほど、デザインの根底にヴィンテージがある。だから、デザインとヴィンテージを両輪でやっているわけですね?

染谷さん:ヴィンテージからインスピレーションを得ているだけではなく、デザイナーの視点があるからこそ、現在のようなセレクトができていると思っています。互いに良い影響を与え合って、相乗効果を生んでいるというか。

買い付けするときも、デザイナー目線でパターン(型)や生地感に目をやると、いろいろ見えてくるものがありますし。

目指したのは古着屋ではなく、“ヴィンテージ・セレクトショップ”。新業態に込められた信念

——「Belphegol」の特徴は、どんなところにあると思いますか?

染谷さん:セレクトの手法が圧倒的に他店さんと違うと思います。生地感や着心地にかなりこだわっているので、買い付けるどうかを決める前に、必ず一着ずつ試着することにしているんです。買い付けの際、そうやって一点ずつセレクトしているお店は他にないんじゃないですかね。

一般的に人気があるものにはあまり興味がなくて、売れるかどうかという物差しで買い付けたことは今まで一度もありません。むしろ、基準にしているのは、単純に僕が良いと思えるかどうか。そこに共感いただける方に届けたいと思っています。

実際、オープン当初から続けて来てくださっている常連さんも多いです。そういう方からの信頼を裏切らないためにも、いまのスタンスは維持していきたいですね。

——お客様の年齢層は?やはり男性のお客様が中心でしょうか?

染谷さん:20代前半から30代がボリュームゾーン。40代の方もいらっしゃいますね。学生の方も多いんですが、社会人ではIT関連や建築のお仕事をされている方もいらっしゃいます。好奇心やこだわりがある方がとても多い感じがします。

取り扱っているのは基本的にはメンズアイテムですが、サイズ感次第では性別問わずお召しいただけるものもたくさんあるので、それを求めて女性のお客様がいらっしゃることもあります。

——どんなアイテムを取り扱っているんですか?

染谷さん:1960年代までのヴィンテージが中心です。アメリカのものが主流ですが、日本やヨーロッパのヴィンテージも取り扱っています。いちばん多いのが、いわゆる民間着と呼ばれる、普段外出する際に着用されていたもの。ほかには、軍モノもあれば、富豪が着ていた服、ワークウエアなど、ジャンルは問わず気に入ったものを置いています。

買い付け先はアメリカが最も多く、年に2、3回のペースで買い付けに行っていました。厳選するので、一般的なお店に比べたら、1回あたりの買い付け量はかなり少ないと思います。オリジナルブランドのほか、ジュエリーも取り扱っているので、無理して気に入らないものを買い付ける必要はなくて。本当に必要なものだけを買って、売り切るようにしています。

そういう意味では、自分の店のことを古着屋と思ったことはあまりないんです。「ヴィンテージのセレクトショップ」といったほうが自分としてはしっくりきますね。

ここにしかない“リアル”な顧客体験を。五感で楽しめる店内とは?

——店内にはおしゃれな家具や調度品が多いですね。インテリアのこだわりを教えてください。 

染谷さん:もともと家具や建築にも興味があるんです。年代や生産地にはとくにこだわらず、僕が好きなものを買い集めては雑多に並べてコラージュしていくイメージです。

いちばん大切なのは、お客様が落ち着けること。その上で、世界観に入り込めるような、非現実的な空間にしたいという思いがあって、現実の世界にはありえないような演出を心がけています。お店の中に一歩足を踏み入れた瞬間に、世界が変わる。そんな感覚を味わっていただけたらと。

——不思議と雑然とした感じがなく統一感があるのが印象的です。

染谷さん:セレクトショップらしく、窮屈な感じにならないように気をつけているからかもしれません

照明にもこだわっています。光をスポットで当てることで、生地の質感が目で見てわかるようにしているんです。

また、試着室にも仕掛けが。中にはフランスの古い掛け時計があって、ドアを閉めるとカチカチと古風な秒針の音を楽しめるようになっているんです。扉を開け閉めするとカウベルが鳴るように工夫してもいます。あとは、会計時に綺麗な音が鳴るレジも、こだわりの品ですね。

コロナ禍で実店舗離れが進む中、そうやって、あえてお客様に五感で楽しんでいただけるような顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)みたいなところにこだわった店作りをしています。リアルでしか体験できないことをどんどん提供していきたいですね。

——接客ではどんなことを心がけていますか?

染谷さん:お客様に寄り添うことがいちばん大事だと思っていて。そのためには、お客様が必要としているもの、着ていて楽しくなるような洋服を提案できなくてはいけない。なので、もし似合ってないと思えば、誤解を恐れずに「似合っていない」とお伝えするようにしています。

接客の原点になっているのは、インターンをしていたスズキタカユキさんのアトリエで感じたこと。スズキさんの服を着たとき、お客様がすごく喜んでいた光景が今も忘れられなくて。とても温かい空気が流れていたんですよね。

それを再現したいという気持ちから、一点一点こだわって自分が気に入ったものだけを取り扱ってきたし、これからも続けていきたいと思っています。

個性を尊重した洋服選びを。自分らしくあるためのお手伝いができたら

——お客様にはどんなふうにヴィンテージを楽しんでもらいたいですか?

染谷さん:全身ヴィンテージである必要はないし、ヴィンテージにブランドやファストファッションを合わせるとか、自由に着ていいと思っています。

ただ、ヴィンテージの醍醐味はレイヤードにあると感じていて。重ねれば重ねるほど奥行きが出ると思っているので、希望されるお客様には、レイヤードの仕方について提案させていただいています。個人的には、ラフでルーズなイメージが好みですね。

——染谷さんにとってヴィンテージとは?

染谷さん:すこしカッコいい言い方をすると、「ロマン」ですかね。入手可能な絶対数が限られていて、チャンスを逃したら二度と手に入りません。そんな儚(はかな)さに惹かれます。

また、ヴィンテージは用途がはっきり決まっていて、実用的なディテールがある。それが、現代の洋服にはあまり見られなくなった機能美を醸し出していることがあります。驚くほどしっかり作り込まれているところがあるかと思えば、技術的な問題で雑な部分もあって、それが味わいに感じられたり、愛着を感じられたり。魅力は尽きないですね。

——最後に、読者の方にメッセージをいただけますか?

染谷さん:僕がデザイナーになることやお店を開くことを決めたきっかけのひとつに、「一生着たい」と思える洋服との出会いがあったんです。通っていたお店のデザイナーさんが作ったコートに袖を通した瞬間にビビッときたのを今でも覚えています。

僕たちが提供したいと思っているのは、洋服そのものだけでなく、洋服をもっと好きになったり、楽しんだりできる、そんなきっかけです。皆さんがいろんな経験の中で自分らしさを形作っていく一環として、「Belphegol」がお役に立てるとすればうれしいなと思っています。

洋服にこだわりがある方はもちろん、これからこだわりを見つけたいという方、ヴィンテージについて教えてほしいという方も大歓迎です。ぜひ怖がらず(笑)、気軽に遊びにきてください!


——取材を終えて

「ビジネスはとても下手だと思いますね。やりたいようにやっているだけで、利益とか全然考えていませんから」といって笑う染谷さん。強いこだわりがビシバシと感じられる反面、物腰のやわらかさがとても印象的でした。

デザイナーとヴィンテージセレクトショップのオーナー、あえて二足のわらじを履くことでシナジーを生み出し、ほかにはない世界観を表現する「Belphegol」。今後、洋服との付き合い方をどんなふうに提案してくれるのか、楽しみです!

Belphegol

166-0003 東京都杉並区高円寺南3丁目21−19 1F

営業時間:14:00〜20:00

定休日:不定休

Instagram:www.instagram.com/belphegol_vintage/


エディター:Yoshihiro

ヴィンテージフリークのフリーライター。ファッションEC批評を中心にウェブメディアの幅広い領域で活動中。趣味はひとりで古着屋巡りをすること。好きな食べ物は、うに。

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