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神戸元町「ジャンルにとらわれず、もっと多彩な楽しみ方を」USED CLOTHING STORE【無無(mumu)】

1 year ago1,013 views

神戸のみなと元町駅からほど近い、海岸通エリア。かつてこのあたりには世界を行き来する船が発着する港があり、貿易の中心地として栄えたことから、異国情緒を感じさせるクラシカルな建物がいまも立ち並んでいます。

おしゃれなカフェや古着屋が立ち並ぶ通の中でもひときわ存在感のあるビル内に店舗を構えるのが、大阪神戸の古着ファンの間で「アイテム選びのセンスが際立っている」と評判の「無無」です。

オーナーの中谷さんに、お店のこだわりや古着、ヴィンテージに対する想いについて、お話を聞きました。

信じるのは、自分の感覚。極限の自由とジャンルレスを求めて

——お店を始めた経緯はどのようなものでしたか?

中谷さん:古着屋を経営しているとてもかっこいい方がいたんです。その方に憧れて、ずっと古着屋をやりたいと思っていました。資金を用意して開業のタイミングをうかがっていたところ、つきあいのあった不動産屋さんと話していたまさにその日、狙っていたテナントに空きが出るというお話しをいただいて、不思議な巡り合わせを感じ、前のオーナーからそのまま引き継がせていただきました。

通常は市場に出回らない人気の物件で、しかも学生時代によく通った、古着屋が多く集まるエリアにある象徴的な建物。2020年の10月にオープンしました。

——どんなアイテムを取り扱っているんですか?仕入れ先や頻度についても教えてください。

中谷さん:80s、90sのものが多いと思います。とはいえ、狙って入れているわけではなくて、僕が気に入ったものが、たまたまそうなっている感じですね。

仕入先は、コロナ禍ということもあり、いまは国内に絞っています。アメリカやヨーロッパなど、海外にバイヤーさんがいらっしゃるような卸さんから一点ずつ仕入れをさせてもらうことが多く、頻度は月に5回程度。何店舗か懇意にしているところに足を運んで、まめに買い付けをするようにしています。

——仕入れの際に大切にしていることはありますか?

中谷さん:在庫を確保することより、そのときそのときの自分の感覚を大事にしています。たとえば、「今期はちょっと垢抜けた感じにしたい」と思ったとすると、それに関連する画像を検索したり、インスタを調べたり。ある程度リサーチして、シューズや小物などのサブアイテムについて、ふわっとイメージをつかんだ状態で買い付けにいきます。

すると卸先で、「このパンツはこんなシューズとマッチしそう」「このTシャツにはこういう小物を合わせて」という具合に想像力が喚起されて、“いま”の自分の感覚にあった、「無無」らしいアイテムが集まっていくと考えています。

——お店の名前が出ましたが、命名の由来についておしえてください。

中谷さん:「無無」という名前には、「隔たりのない究極の自由、究極のジャンルレス」という意味を込めています。僕らは選びたいように服を選んでいるつもりですし、お客様にも自由におしゃれを楽しんでいただきたいと思っています。縛りやルール、固定概念など、堅苦しいものは一切持ち込まない。そんな空間にしたくて名付けました。

「無無」が「無無」であるために。譲れない3つのこだわり

——買い付けの際、気をつけている点や大事にしていることはありますか?

中谷さん:アイテムを選ぶ際はかなりこだわっています。とくに気をつけているのが、以下の3つです。

1. 理にかなった価格であること

2. 売れるものよりも、売りたいものを扱うこと

3. イメージを大切にすること

1つ目は、「理にかなった価格であること」です。相場感も、もちろん大事ですが、「自分がこのアイテムを買うなら、いくらで欲しいか」という視点を大事にしています。希少価値の高いものは高値で取引されますが、古着の楽しみの一つは、たくさんの洋服を安く買っておしゃれを楽しむところにあると思っています。

僕が古着を好きになった頃、古着はもっと身近なものでした。決して安さを売りにするつもりはありませんが、お客様が「これいいな」と思ってアイテムを手に取り、プライスタグを見て、「高っ!」となるようなことはできるだけ避けたいと考えています。手が届きやすい価格を心がけ、高価なものはなるべく置かないようにしています。

——なるほど!お客様に楽しんでもらうことが最優先ということですね。2つ目のこだわりについても教えてください。

中谷さん:2つ目は、「売れるものよりも、売りたいものを扱うこと」です。これは、多くの古着屋さんがおっしゃるところだと思いますが、僕はかなり徹底していると思っていて。

どんなに流行しているもの、人気があるものでも、それがそのときの自分の感覚や、お店のコンセプトに合わないと思えば、決して買い付けません。いちばん大事なことを見失わないよう、ビジネス的な考えはできるだけ排除するようにしています。

——3つ目のこだわりも気になります!

中谷さん:3つ目は、「イメージ」を大切にすることです。実はこれ、以下の3つのポイントがあって、

1. 着用時のイメージ

2. 着回しのイメージ

3. 着ている人のイメージ

イメージの中で一番大事にしているのが、「着用時のイメージ」です。見た感じは良くても、着てみたら「なんか違う」となることってありますよね。僕が探しているのは、それとは真逆のアイテム。「着てみたら、思いのほかいい」と思えるようなものを買い付けるようにしています。

アイテムを見たときに、大体の着用時の雰囲気をイメージできるのが僕の特技です。他の方たちが手に取らないような、一見ぱっとしないけれど、実際に袖を通すと雰囲気があるものを探すように意識しています。

「着回しのイメージ」も重視している点です。合わせ方や、着る人次第で違う雰囲気が楽しめるアイテムがとても好きで。たとえば、トラックジャケットは、ミリタリーアイテムと合わせてミクスチュアが楽しめるし、パーカーやスニーカーと合わせてストリート風に仕上げてもいい。そういうコーディネートの幅や使い回しやすさを大事にしていますね。

「着ている人のイメージ」も買い付け時にイメージするようにしています。「この服はこういう雰囲気のこういう髪型の人に似合いそう」「こういうシーンで着てほしいな」と、かなり具体的にイメージして、そのアイテムを気に入ってくれる方がどういう所を大切にするかを考えています。

たとえば、ストリートが好きな方にハマりそうなアイテムなら、もっとワイドなシルエットの方がいいとか、アディダスが好きな方ならこの配色の方が好きだろうとか。

そんなイメージが膨らむものを積極的に選んでいます。

もちろん、自分がイメージしたとおりのお客様に買っていただきたいと思っているわけではありません。むしろ、自分が思いもしない方が手にとってくださったり、自分の思いもしない合わせ方をされるのも楽しみのひとつです。

心がけているのは、アイテムの魅力がダイレクトに伝わる空間作り

——お店の空間的な特徴を教えてください。

中谷さん:まず大切にしているのが、店内をできるだけ明るくすることです。理由は、アイテムの色やフォルムやシルエットなどを、お客様に正確に捉えていただきたいと思っているから。アイテム本来の色が見た瞬間にわかる明るさにするよう心がけています。

——物件の魅力も手伝ってか、白を基調とした明るい空間だからこその洗練された雰囲気を感じます。とくに気をつけている点はありますか?

中谷さん:店内に入った瞬間、感覚的に「この店、かっこいいぞ」と思っていただけるような、第一印象でインパクトを与えるような店作りをを意識しています。

たとえば、カテゴリーごとではなく、色調を軸にレイアウトを組むことが多いですね。古着は、生地も柄も色もサイズもバラバラ。シャツやパンツなどカテゴリーごとに並べるより、色調でまとめたほうがすっきりして見えると思っています。

同じ色だとしても、明度や彩度が違うものを並べると違和感があるので、たとえば、あえて緑と赤を並べることも。おそらく全国の古着屋さんの中でもかなり狭いほうだと思うので、そうやってごちゃごちゃした印象にならないよう工夫しています。

また、Tシャツはプリントが見えやすいように木のハンガーを使っていて。全体的な白の基調と合わせるためにハンガーも白にしています。

——そのほか、インテリアで力を入れているポイントがあれば教えてください。

中谷さん:店内はまだ作り込んでいる途中ですが、レジ周りにアートを飾っています。白を基調とした明るい空間はポップアートと相性がいいと思っていて。いずれにしても、統一感のあるインテリアになるよう心がけていますね。

——お客様の男女比は?どういった方が多くいらっしゃいますか?

中谷さん:8〜9割は男性のお客様です。20〜30代が中心で、たまに40代の方が来てくださることもありますね。オンラインストアでは女性のご購入も結構あります。おしゃれに対する考え方が確立していて、好きなものがはっきりしている方が多い印象です。

皆さん好きにお買い物を楽しまれるので、あまりお客様に声かけすることはありません。どのアイテムにも思い入れがありますが、僕たちの考え方を押し付けたり、自分たちの色に染めたくなくて。お店のコンセプトにもあるように、自由に楽しんでいただきたいという気持ちがあります。

——アイテムのコンディションがとても良いのが印象的です。心がけていることはありますか?

中谷さん:買い付け時の状態確認は徹底していて、隅から隅までチェックして、目立ったダメージがあるものは取らないようにしています。

また、コインランドリーでまとめて洗濯・タンブラー乾燥しているお店が多いと思いますが、それもしていません。洗濯後、型がつかないようにハンガーにも気を使って自然乾燥し、すべて手作業でアイロンがけした上で店頭に出しています。

多彩な楽しみ方ができるのが古着の魅力。自分の感性に敏感であるための力になれたら

——ご自身の感覚を養う上で、どんなところからインスピレーションを受けていますか?

中谷さん:他のお店さんやインフルエンサーのInstagram、ファッション誌、音楽など、実にさまざまなところから影響を受けていると思います。とくにPinterestは海外ストリートスナップを中心に時間さえあれば見るようにしていますね。男性よりも女性のファッションからインスピレーションを受けることが多いですね。

あとは実際のストリートもチェックしています。SNSやファッション誌で見るファッショニスタによる完成度の高い装いから学ぶことも多いですが、街ゆく人の何気ない着こなしには独特のかっこよさ、おしゃれさがあって。ピンときた理由を探っているうちに、買い付けのヒントをもらうことがあります。

あとは、公園とかにいるおじいちゃんとか(笑)。パンツのシルエットやサイズ感、色のバランスなど、絶妙なゆるさ加減が、僕が理想とする世界観とシンクロすることがあります。

——中谷さんにとって古着、ヴィンテージとは?

中谷さん:限りなく自由なもの。これにつきると思っています。具体的にいうなら、楽しみ方に多彩さがあるところが古着の魅力かなと。

ロマンを求めるのも素敵だし、コレクションも一つの楽しみ方。ファッションの幅を広げるツールとして使ったっていいですしね。その人の裁量で好きなように楽しめるのが、古着、ヴィンテージじゃないかなと思っています。

——まさにお店のコンセプトにもなっている、「究極の自由」というところですね。最後に、読者の方にメッセージをいただけますか?

「かっこいいな」と思う人を見てその服に興味を持ったり、古着屋になりたいと思ったり。音楽でも映画でもなんでもいいんですが、すべての人が自分の感性に素直で、憧れに対して純粋でいられたらいいなと心から思っています。

古着を通じて、僕たちがそのお手伝いができるとしたら、こんなうれしいことはありません。たくさんの「自由」を集めてお待ちしています。神戸に寄ることがあったら、ぜひのぞいてみてください!


——取材を終えて

「自分たちのペースで、自分たちの良いと思ったものをコンスタントに出し続けていければいいですね」と話す中谷さん。お店も、店内のアイテムも魅力的ですが、少し話しただけで表裏がない人だとすぐにわかる好青年ぶりがとても印象的でした。

自由を愛し、感性の力を信じる「無無」。神戸に行ったらぜひ立ち寄りたいお店がまたひとつ増えました。皆さんもぜひその魅力を実感してみてください!

無無

650-0023 兵庫県神戸市中央区栄町通3-1-7栄町ビルディング110

営業時間:13:00〜19:00

定休日:木曜日

Instagram:https://www.instagram.com/mumu_furugiya/


エディター:Yoshihiro

ヴィンテージフリークのフリーライター。ファッションEC批評を中心にウェブメディアの幅広い領域で活動中。趣味はひとりで古着屋巡りをすること。好きな食べ物は、うに。

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