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Culture

勝手にこなれ感。魅力ある古着の魔法

2 years ago1,401 views

新幹線が開通し高速道路も通り、製造業においても高い技術性を発揮する分野の製品を多く輸出し、対外貿易で大きく黒字をたたき出すような時代。

当時の日本は「一億総中流社会」と言われ誰もが同じほどの豊かさを持ち、安定した豊かさが凡庸と信じられていました。

高度経済成長を経て80年代には安定的な経済成長期へと移り変わり、その後バブル期へと突入していく、経済的にも社会的にも大きく変換するうねりの中で、人びとの暮らし方の意識も変わっていきます。 

人間が生きていく上で生活の基盤となる「衣・食・住」は切り離せないもの。

暑さ寒さをしのぎ身体を防護するものとしての「衣」はしかし、同時に「社会性」を象徴するものにもなっています。

「地位」や「感性」といったアイデンティティの片鱗を、その人が身につけているものやファッション性からある程度推測することができてしまったり…

必然でしかなかった「衣」が人の内面やセンスを映し出す、ファッションという自己表現の役割を果たすようになったのです。

人々が自由な感覚でオシャレを楽しむようになったことでファッション雑誌が数多く誕生し、それらは流行やモードに敏感な人たちの参考書として愛読されるようになります。

今ではインターネット環境さえあれば地方にいようといつでも最先端の情報が手に入りますが、そうなるまでは流行なんてものは都会の人にしかリアルタイムで手に入れることができないのが常識で、田舎の少女が同じ情報を手に入れた時にはすでにブームは過ぎ去っていた…なんてこともあったとかなかったとか。

とにもかくにも、その当時ファッション業界では大量生産が定着化し、皆が豊かで同じようなものを持つようになったことで、人びとは徐々に他とは違う価値観や姿勢を反映したライフスタイルを求めるようになっていくのです。

1980年代の社会現象を語るうえで絶対に切り離せないのが、DCブランドと呼ばれる日本発ファッションブランドの爆発的な流行。

特に黒を基調にした「コムデギャルソン」や「ヨウジヤマモト」などの提案するコーディネートは、それまで黒い服は喪服といった概念しかなかった当時の世の中にとても強い衝撃を与える一大ムーブメントとなったようです。

今ではモノトーンや黒一色の着こなしも一般的になっていますが、当時のファッション業界では新鋭デザイナーたちが装いの自由を提唱し時代の彩りをリードしていったことが読み取れます。

それまでの既製服とは一線を画したデザイナーの個性が光るファッションの発信は、80年代半ばになると多彩な色や柄が使われたポップなものやスポーティでカジュアルな路線に移行していきます。

実際に当時の最先端に触れてはいない身としては不確かではあるものの、数多ある情報を振り返ると黒ずくめコーデの頃もその後のカラフルポップゆるコーデの時代も、男女問わず着られるような性差のないもの、性的区別を持たせないものが流行したようです。

これは2021年現在のビッグシルエット・オーバーサイズといった、ここ2〜3年続いている息の長いトレンドと重なってきます。

ジェンダーレスな考えが徐々に広がりつつある今、メンズアイテムを女性向けコーディネートとして提案していることも多くあります。

LGBTやジェンダレス問題を考える時、性的な意識を持たせないユニセックスなものや男女関係なく着られる身体にフィットしない、ダボダボ系ビッグサイズファッションが注目されるのも当然かもしれません。

そんなことが時をさかのぼること何十年も前に想像されていたのかはわかりかねますが、いずれにせよ先人たちの感性とそれを共有してくださった行動力やアイデアには脱帽程度ではおさまらぬ感動を覚えます。

私の心の振動はさておき、

80年代をまた別の角度から見て印象的なスタイルの一つ「カラフルでポップ」に注目してみます。

明るいカラーを用いたプリントや鮮明なロゴなどが、健康的なフィーリングを放ちそのポップさがティーンエイジャーたちのハートにぴったりはまったのでしょう。

オーバーシルエットのポロシャツやジャケットスタイルが一世を風靡、当時のスタイルを語るうえで大きめシルエットのアイテムを外すことはできません。

その頃、日本のファッションシーンを牽引した「PERSON'S」。

まさにポップなプリントアイテムで大ブレイクしたブランドです。

当時流行したエアロビクスなど健康志向の上昇も関係してか、ナイキやアディダスなどのスポーツ系アイテムがファッション業界でも浸透しはじめ、スポーティなスタイルの人気が高まっていったという背景もあるようです。

それまでブランドと言えばいわゆるオジサマ方の着る「アーノルドパーマー」や「クロコダイル」くらいしか知らなかった田舎者の少女は、友達が学校に持って来る体操服を入れた巾着型のショップ袋にまばゆさを感じたものです。

VIVA YOU、BIGI、PERSON’Sなどのロゴが入った服が流行っていた頃で、おそらく友達も年長の兄弟姉妹や都会に住む親戚などから入手したものと推測するものの、そのショップ袋にさえ憧れの眼差しが注がれるような神々しい存在でした。

のちにPERSON'Sは文房具やバッグなど幅広いジャンルで多くのアイテムを世に送り出すのですが、やはりそのポップなカラーリングと生き生きとして感じたロゴパターンの魅力に心奪われままでしたのでペンも定規もペンケースもPERSON’Sで揃えていたことは言うまでもなく。

文具やカップなどの雑貨はその後もたくさん入手する機会があり、身近に感じていたブランド。

服こそ着る機会がなかったとはいえ、メガネやアート、インテリアから食器に至るまで幅広いアイテムの展開でライフスタイル全般を提案しているシーンに出会ってきました。

ある日訪れた古着屋で心惹かれたスリーブレスのプルオーバーは、柄に柄しかもノスタルジックな花柄に強気なイメージのヒョウ柄の組み合わせ。

これはなかなか難しい、けれども想像力が掻き立てられる1着とのめぐり合い。

アニマル柄はもともと好きでコーデに取り入れるため、職場の可愛い同僚からサファリパークの飼育員同盟の任命を受けたことはあるものの、そこに花柄を同居させるアイデアは1ミリもなく。

想像の上を行く二人三脚のギャップに悶える私の目に映った襟もとのブランドタグは「PERSON'S1976」。

おしゃれには我慢が必要とはよく聞くワードですが、私はオシャレは挑戦ととらえます。

衣服をまとう行為は生きていくために必要なこと、だったら楽しもうと。

楽しくなるよう挑戦していこうと思うのです。

無難という地味ループはどこにでも紛れられて安心かもしれない、けれど楽しさをそこには見つけられないのはつまらない。

明日、何かしらで命が尽きるかもしれない、もしかしたら今夜かも、だからもう我慢などしている場合ではないのです。

一度きりの人生だものどうせなら毎分、楽しい気持ちでいたいのです。

今回の挑戦はスリーブレスアイテムということもあり、幅広く使い回しができることでどうやらヘビロテ必至の一軍に入ってきそうです。

花柄&ヒョウ柄というお互い強い主張を持つもの同士がケンカせず、むしろ協力関係にすらあるかのように感じるのは土埃っぽい色味の効果なのでしょうか。

ピカピカに鮮やかな色味だったら、もっとまとまりのないうるさげな印象になり、可愛げがなかったかもしれません。

もしかしたら経年のおかげでこのほど良い白け具合になっているのならば、「古着バンザイ!」と言わずにはいられない気分です。

またタンクトップほど首や腕周りが大きく開いていないので、肩幅の広さやたくましい二の腕の存在感が強調されることなくおさまりが良いのも好ましいところ。

真夏日の滝汗もコットン100%素材のためしっかり吸汗してくれそう。

着心地が良くないと、どうしても出番は減ってしまうので素材や肌触りは重要です。

繰り返し洗いになんなく耐える丈夫さや、製品の作りが良いことがつまり着心地にも関わってきますね。

そうして経年変化による着なれたような味わい深いアイテムを取り入れたいでたちは、なんとも小粋に感じます。

肩肘張らない大人のおしゃれさを、いとも簡単に与えてくれる古着は、やはり私の人生を多彩に彩る偉大な先人からのギフトに他ならないと、あらためて思うのです。


エディター : 高橋 由衣

www.instagram.com/iii.p_qiii/?hl=ja

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