【山口市・RONDO】“もったいない”の気持ちが原点。古き良きものを次の世代へ - 古着屋オーナーの"First" Vintage vol.10
≪今回取材をしたのはこんなお店≫
山口市中心商店街の老舗メガネ店跡に位置する「RONDO」。その場所柄から、街を行き交う老若男女から愛される、地域密着型の古着屋です。
2022年7月16日のオープン以来、「古き良きものを残し、次世代に伝えたい」との思いを大事に、こだわりのアイテムを展開してきたオーナーの福田さんにお話しをうかがいました。
福田さんの"First" Vintageを教えてください!
最初に購入した古着は‥‥ 【adidasのトラックジャケット】
——初めて購入したアイテム、お店やエピソードを教えてください。
90年代の前半、高校1年生のときに、adidasのトラックジャケットを初めて買いました。赤とネイビーのツートンカラーで、胸下のあたりにロゴが入ったデザインに一目惚れ。もともと赤が好きだったのと、試着したらサイズもぴったりで、すぐに購入しました。80年代のアイテムだったと思います。
場所は、北九州の小倉という町にあった小さなビル。テナントの半分以上が古着屋で、地元山口のお店よりも圧倒的に品揃えが充実していたので、海を越えて、はるばる買いに行ったのを覚えています。
——古着に興味を持つようになったきっかけは?
中高生だった25年ぐらい前、ちょうどアメカジブームがあって。そのとき、どの雑誌を読んでいてもストリートブランドが特集されていて、街には古着屋がたくさんあり、おしゃれな人はだいたい古着を着ていました。おしゃれになるためには、まず古着を手に入れなきゃ、という雰囲気があったので、自然に古着が身近にあったという感覚です。古いものが好きというより、あくまでおしゃれなものとして入っていきました。個人的には、大好きなヒップホップの影響もあって、カーハートが好きでよく着ていますね。
日本庭園を受け継ぎ、RONDOをオープン
——お店をオープンされたいきさつについて教えてください!
自分が運営しているセレクトショップの向かいに、創業100年を超える「井ビシ眼鏡店」というメガネ店さんがあり、以前から仲良くさせていただいていました。そのお店の奥に、とても大事に手入れされてきた美しい日本庭園があるのですが、突然店主さんが亡くなって店をたたむと聞いたとき、商店街でずっと守られてきた財産が見られなくなってしまうのはもったいないと思ったんです。そこで、後世になんとか残せないかなと思い、とっさに「僕にここでお店をやらせてください!」といったのが、きっかけです。
服屋をやっていたこともあり、古着を扱う店なら、「古いものを残したい」というもともとの発想ともぴったり合うと考え、古着屋を始めることにしました。
——店名の由来は?
福田さん:「もったいない」「今あるものを活かしたい」という思いをうまく表現した言葉を探していたときにたどり着いたのが、「RONDO」というワードでした。「RONDO」には、円く輪になって歌いながら踊るという意味や、音楽形式として同じ旋律が何度か繰り返される意味があるんです。「輪になる」「繰り返す」というところが、お店のコンセプトにぴったり合うと思って決めました。
——どういったアイテムを取り扱っていますか?
自分が初めてadidasのトラックジャケットを見つけたときの感動をすごい大事にしていて。いわゆるスポーツブランドやストリートブランドなど、今の若い子たちとの親和性も高いということで、自分がリアルに見てきたヒップホップやR&Bといった音楽、ストリートカルチャーを意識しながらセレクトしています。
自分の趣味嗜好を押し付けるつもりはないですが、自分の感覚は素直に取り入れています。
——商品はどこから仕入れていますか?商品選びのこだわりも教えてください!
国内のディーラーさんと、海外にいる知り合いのバイヤーさんから買い付けています。割合的には半々ぐらいで、商品はわりと直感的で、女性向けのアイテムを選ぶときも、男目線で「これ着たほうがかわいいじゃん」と思うものをピックするようにしていますね。
——インテリアの特徴についても聞かせてください。
見せ方としては、セレクトショップを意識しています。雑多な感じではなく、なるべくきれいに見せたいという気持ちがあって。古着というと全部が一点物。しっかり商品を見ながら、自分が気に入ったものを見つけてもらえればと思っています。
インテリアのポイントは、美しい中庭と、レジカウンターの建具。建具は以前、メガネを調節するための部屋だったのですが、100年前からある建具をそのまま使っています。
——お客様の年齢層は?接客で心がけていることは何でしょうか。
商店街という立地もあって、老若男女ですね。今っぽい商品もたくさん置いていますが、若い子たちだけを相手にしようという感覚はあまりなくて。マネキンに着せたものを60代ぐらいの女性が買っていってくれることもありますよ。
まさに地域に密着した古着屋ですね。コンセプトが、「古き良きものを残し、次世代に伝えたい」なので、服好きだけでなく、いろんな人に来てもらいたいというスタンスでやっています。
自分が一番自分らしくいられる古着を
——古着初心者の方に、古着の楽しみ方のアドバイスをください。
古着のいいところは、時間を感じられることだと思うんです。「誰がいつどういう経緯で買って、どんなふうに着ていたんだろう」という感じで、想像力をかき立てるところが魅力かなと。そういったストーリー的なものと一緒に楽しんで欲しいですね。
アイテムを選びに迷ったら、「誰からモテたいか」を考えてみるのもいいかもしれませんね。好きな人でもいいし、兄弟/姉妹とか親でもいい。身近にいる誰にちやほやされたいかを基準に探したら、おもしろいものが見つかるかもしれません。
そうやって何を着たいかを自分で考えることが大事だと思っていて。かつて古着ブームだったときがそうだったように、いろんな着こなしを楽しんで欲しいですね。SNSを見て誰かの真似をするのもいいけど、自分が本当に好きだと思えるものを持つことの楽しさを伝えてあげられたらと思っています。
——今後、どんなお店にしていきたいですか?
古くから大切にされてきたものをなんとか受け継ぐことができました。いつか次の世代の中から、「もったいない」と思ってくれる人が出てくるようなお店になるといいですね。コンセプトをバトンのように渡していくことが、今の目標です。
お話を聞いていて、良いものを受け継ぎ、次の世代に渡していくこと、そして人との出会いをとても大切にされていて、それが「RONDO」のお店づくりにあらわれていると感じました。アイテムにはこだわりがありながらも、立地も雰囲気も、良い意味で庶民的なお店です。ぜひみなさんも気軽に立ち寄ってみてください
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RONDO
エディター:Yoshihiro
ヴィンテージフリークのフリーライター。ファッションEC批評を中心にウェブメディアの幅広い領域で活動中。趣味はひとりで古着屋巡りをすること。好きな食べ物は、うに。