【北海道小樽・STORAGE】奇跡の刺繍アイテムと旬のストリートファッションのお店 - 古着屋オーナーの"First" Vintage vol.15
≪今回取材をしたのはこんなお店≫
札幌市の北西に位置する港湾都市、小樽は現在カフェやショップが立ち並ぶモダンな地区として知られています。そんな小樽の港を見下ろす高台にひっそりと佇むのが、「古着屋STORAGE(ストレージ)」。
2020年8月に古着屋をスタートさせた約2年後にはカフェも併設されるなど、より幅広い世代のお客様が来店するようになりました。
「STORAGE」店内で扱われるアイテムはもちろん、オーナー自身の魅力に取り憑かれて虜になってしまう人も多いのだとか……。そんな古着屋界の鬼才、中畑さんに、古着との出会いから現在に至るまでの経緯を伺いました。
中畑さんの"First" Vintageを教えてください!
最初に購入した古着は‥‥ 【70年代 ミッキーマウスTシャツ】
― 中畑さんが古着と出会ったのはいつのことですか。
中学生の頃から古着は好きで、高校1年生のときに初めて入った古着屋で買ったミッキーマウスのTシャツが最初ですね。札幌のお店だったんですけど、古着屋自体の敷居が高い時代でもありましたし、おそるおそる入店してたまたま目に入ったのがこのTシャツでした。バイト代で買ったんですけど、5万円くらいしてました。
ー 5万円!? かなり高額ですね。
当時は、古着の知識や価値もそこまで知らなかったですし、商品に値札もついてなかったですし、とりあえず「かわいいな」って思って買ったんですけど、今思うとけっこう高かったですね(笑)。
ー でも、知識がないと高い方が良いものっていう気がしてしまいそうです。
価格は時代によって変わるものですし、若いお客さんにも楽しんでもらえるように、できるだけ安価に設定してます。
例えば昨日も、1万円の予算でお店に来てくれた方が、何を買うべきか悩みつつ1万円近いスウェットを買おうとしておられてるのを見て、ストリート系にいきたいってことだったので、おすすめの服を提案したんですよね。手頃なスウェットと「LEVI'S 550」って感じで。そしたら、結果的に1000円余ったから「お母さんになんかお土産買っていったら?」って言って。無理に高いものを買う必要はないし、効率良く古着との付き合いを楽しんでほしい。高校のときに投資して失敗した5万円の価値が今に生きてるでしょうか(笑)。
ー 中畑さんご自身は、普段はどんなコーディネートをしてますか?
ワンポイントに使ったり全身古着だったり。とくにこだわりはなくて、そのときどきで変わります。
ー 数ある古着の中でもおすすめのアイテムはなんでしょう?
やっぱり、80年代後半から90年代前半あたりのものがいいです。素材からして違いますし、縫製やプリントとか、企業がしのぎを削ってる時代だったので、そのあたりのものでぜひ掘り出し物を見つけてほしいですね。
お宝との出逢いは突然に!持ち前のセンスが生かされたタイの旅
ー そもそも古着屋をやることになったのはどういうきっかけがあったのですか?
古着ブームが来る以前のことですけど、たまたまタイに商材がないかなと思って行ってみたら、そこで古着に出会って古着屋に転換した感じです。
ー 当初からタイで古着を仕入れようと思っていたんですか?
いえ。実は、雑貨をみたいなと思って週末に開催されるバンコク最大の市場「チャトチャックウィークエンドマーケット」に行ったら、特に良いものがなくてちょっと途方に暮れてたんですね。それで、旅行気分でカンボジアの宮殿を観に行こうかと。そしたら、観に行く途中の国境のところにものすごい市場があったんですよ。それが、カンボジア国境にあるロンクルア市場でした。
当時はまだ地雷とかも埋まってた頃で、そこにとんでもないヴィンテージが置かれていて。「HARLEY-DAVIDSON」のアパレルが、ひとつ500円ぐらいで買えたので、予想以上の売り上げになっちゃったんですよ。そこから3年くらいは毎月のようにタイに行って仕入れてたんですけど、コロナが来ちゃったんですよね。
大きな地獄は3回。激動の波を乗りこなす華麗な復活劇
― 今はYouTubeで経営についての起業アドバイスなんかもされている中畑さんですが、ご自身は今のお店をすんなりオープンできたのでしょうか?
とんでもないです。僕はこれまでに、小さい地獄はたくさんみましたけど、3回ぐらい大きい地獄を経験していますので(笑)。
まず、2018年に北海道胆振東部地震でブラックアウトしたときですね。そのとき、なぜか僕の上のお店だけがスプリンクラーが破裂したんですよ。あれは地獄でした。
次の地獄が、やっぱりコロナですね。持続化給付金制度を使って今のお店をDIYでなんとかかたちにしたんですが、もう床と柱と壁だけの何もない状態からのスタートでした。そこがもともと倉庫として利用していたところだったので、「ストレージ」って名付けたんです。
そして、3回目の地獄は2020年のことで、このときはいろいろ大変なことがあって「ストレージ」が一回つぶれかけました。
ー そこからどうやって復活なさったんですか?
実は、小樽市がコロナ禍でがんばっている企業に「ものづくり補助金」っていうのを出してくれていたんですね。そのお金で買ったミシンが救世主になったんです。
ー スタッフさんの中に、ミシンの使い手がいたというわけですか?
いえいえ。うちのスタッフは誰も服飾系の学校を出ていないですし、みんなで試行錯誤しながら1カ月半かけて猛勉強したっていう感じです。とにかく在庫もないし、時間だけが余ってたので、「このミシンで刺繍をやってみよう」という流れで。
ー 代表的な刺繍の作品は、とても人気ですよね。本格的に火が付いたのはどんなきっかけでしたか?
それがもう当時は何が何だか僕にもわからない状態で、iPhoneが壊れたのかと思ったくらいで追いつけてないという感じでした。どうやら、TikTokでフォロワーが30万人ぐらいの方がお店に来てくださっていたとかで、その方がうちのオリジナルのトレーナーを着てくださってたらしいんですけど、いまだにその方が誰なのかわからないんですよ。この場を借りてお礼を伝えたいくらいです。
雑食オーナーの想いはひとつ「古着を楽しんでほしい」
ー 古着以外にもお店ではファイヤーキングとか置かれていますが、ジャンル的にはどのあたりがメインになるでしょうか?
僕は雑食で、なんでも好きなんです。例えば音楽はとても好きで、洋楽・邦楽問わずよく聴きます。「2パック」とかをリアルタイムで聴いていた世代ではあるのでヒップホップ寄りではあって、一番好きなジャンルを無理に挙げるなら、R&B。お店のコンセプトも一応「ストリートファッション」にしています。ただ、時代のトレンドをみて、それに合わせていっていますね。
ー YouTubeの編集も、DIYもすべてご自分でされていて、器用ですよね。
器用貧乏です……。キッチンカーのDIYは、ほぼアドリブだったんですけど、奇跡でした(笑)。
ー カフェのハンバーガーは独特ですが、あれはどうやって生まれたメニューなのでしょうか?
まず、『世界のサンドイッチ図鑑:意外な組み合わせが楽しいご当地レシピ355』という本を買って、一番作りやすそうだったものを見よう見まねで作ったらおいしかったというだけなんですよ(笑)
ー これからストレージはどこを目指していかれるんでしょうか?
カフェもやるようになったことで、より幅広い層のニーズに応えていけるのではないかと思っています。たくさんの方々にどんどん古着を楽しんでいただきたいので、トレンドに合わせたデザインをご提案したり、無駄に価格が上がらないようにしたり、古着との付き合いが楽しくなるような環境づくりに尽力していきたいと思っています。
古着屋STORAGE
〒047-0001 北海道小樽市若竹町18-25
営業時間 / 定休日:毎週月曜定休日(祝日除く)PM12:00〜PM20:00
※ 木曜、日曜はPM12:00〜PM19:00
Instagram:https://www.instagram.com/storage_otaru/
オンラインストア:https://storage-unlimited.jp/
エディター:鈴木一禾
フリーライター/エディター。企業オウンドメディア向けコンテンツ作成や編集業務に従事。趣味はピアノとマクラメ編み。