【中目黒・FRISKY】本当の意味での『一点もの』を現地から - 古着屋オーナーの"First" Vintage vol.62
≪今回取材をしたのはこんなお店≫
「FRISKY」があるのは、中目黒駅から伸びる目黒銀座商店会の中。古いものと新しいものが混じり合う下町風情ある街並みに馴染むように佇んでいます。扉をくぐると迎えてくれるのは、若きオーナーの小柳津(おやいづ)さん。アメリカ古着への想いやお店のこだわりについてお聞きしました!
1:小柳津さんの"First" Vintageを教えてください!
最初に購入した古着は‥‥ 【LACOSTEのネイビーのカーディガン】
——初めて購入したアイテムについて教えてください。
高校生のときに買ったLACOSTEのネイビーのカーディガンが最初です。学校の制服に合わせたくて選びました。周囲のほとんどがユニクロを着ている中、どうせ買うなら良いものをと考えたのが理由です。
購入した場所は、地元八王子のお店。洋服好きの友達が一緒でした。当時は部活をしていたのでお金がなく、安くおしゃれできることに惹かれて購入したのを覚えています。
——ファッションや古着に興味を持ったきっかけは?
中学校のころでした。兄の影響が大きかったと思います。とてもオシャレな人で、奇抜なスタイルを楽しんでいた彼に憧れるようにファッションに興味を持つようになりました。
古着については、大人が着るものという漠然とした憧れのようなイメージを持っていた記憶があります。ヴィンテージの魅力を知り、お店を選ぶようになったのは、大学生になってから。そのころから、将来は洋服屋をやりたいと考えていました。
2:思い立ってすぐに単身渡米。情熱に火がつき、古着の世界へ
——お店をオープンされたいきさつについて教えてください!
大学卒業後、新卒でセレクトショップに入社しました。そこで古着が好きな先輩と出会い、2人でよく古着屋回りをしているうちに古着をやりたい気持ちが強くなり、休暇をとって単身でシアトルへ。マーケットなども全部自分で調べて現地で買い付けし、オンラインストアを始めました。
そのうちに先輩から「EVERGREEN」のオーナーを紹介され、仕事をしながら休日だけ働かせてもらうことに。その後、知り合いのコーヒー屋さんで間借りして古着を売ったり、高円寺の古着屋さんで働いたりしていたこともありました。
「EVERGREEN」で販売し始めたのは2022年1月です。引退を考えていたオーナーから店舗の半分のスペースを提供してもらったことがきっかけでした。
それから丸2年間後、「EVERGREEN」のオーナーが引退を決意され、お店を譲り受ける形で、2024年の1月3日に「FRISKY」としてオープンしました。
——店名の由来は?
ちょうどお店を立ち上げようと思ったとき、たまたま後ろに流れていたのが、スライ&ザ・ファミリーストーンの「FRISKY」でした。「元気に跳ね回る」という意味の単語ですが、語呂がいいし、ちょっとアングラっぽい意味もある。古着屋にうってつけだと感じて、あまり深く考えずに決めました(笑)。
3:アメリカ文化に根ざした、本当の意味での「一点もの」を
——どういったアイテムを取り扱っていますか?
アメリカ古着が中心です。中でもいつも探しているのは、当時着ていた方の個性や情景が伝わるような、本当の意味の「一点もの」。古着ってよく一点ものと言われますが、ほとんどのアイテムが似たり寄ったりで、探せば同じようなものが見つかると考えていて。日本ではなかなか手に入らないアメリカならではのもの、世界にひとつしかないものを集めています。
たとえば、この羽織は70年代ぐらいのものです。フィードサック(穀物を入れるための袋のこと)を材料にしたもので、裏地付き。カリフォルニア米に使われていたもののようです。
これらのスタッフジャケットも年代のもの。左側のものは60年代のものでチンストラップが付いていて、フロントのパイピングがアシンメトリーになっているレアなタイプ。この年代はプリントものが多く、無地で良いデザインのものはなかなか出てきません。
中央のものはリブの色が個人的に気に入っている50年代のもの。バックプリントもオシャレ。右はチャンピオンで、70年代のものです。良い感じのタグが付いています。
これは現地でつくられたハンドメイド品。色使いがユニークな上に、胸ポケットに丁寧にパイピングが施してあるなど、細部まで作り込まれています。買い付け時にこういうアイテムに出会えるのは、運が良いときですね。
あとはワッペンがたくさん貼られたボーイスカウトシャツやブラスバンドの衣装など、見つけたら買うようにしています。
——アメリカ古着への関心のきっかけは?
僕が古着に関心を持ち始めたころは、アメリカ古着ばかりで、ユーロものはあまり出回っていませんでした。あとは、アメリカ文化への漠然とした憧れみたいなものも影響していると思います。
——仕入れについて教えてください。
雑貨をやりたいのと、アメリカでしか買えないアイテムがほしいので、海外買い付けがメインです。現地の配達員さんの装いやホームレスの着こなしから仕入れのインスピレーションを受けることもありますしね。前回は20日間くらい滞在しました。
特別感のあるアイテムを探している一方、年代へのこだわりもあるので、そのあたりの塩梅を見極めながら、ちょうど良い感じの落としどころを狙って買い付けていく感じです。
——インテリアで気をつけていることはありますか?
オープンしてまだ間もないので、ほぼほぼ譲り受けたときの状態のままです。将来的には、壁もライトも白くしたり、植物を置いたりして、いまよりも明るく圧迫感がない雰囲気にしたいと思っています。
——お客様の年齢層は?接客で心がけていることはありますか?
20代くらいの方が多い印象ですが、商店街の中という場所がら年齢層はとても幅広く、地元のマダムなども見えます。
「EVERGREEN」と一緒にやっていたころから来てくれる方もいますが、当時から「FRISKY」のお客様は若い方が中心でした。最近は「Vintage Cityを見て来た」という方も増えています。
接客については、居心地のよい雰囲気づくりをめざしています。お客様と世間話したりすることもありますが、ちゃんと人は見ていますよ。
外で一緒にタバコを吸ったり、お酒を持ってきてくださる方がいれば一緒に飲んだり。緩くやっています(笑)。
5:古着に正解はない。店員さんをうまく使って楽しんでほしい
——古着初心者の方に、古着の楽しみ方のアドバイスをいただけますか?
古着に正解はないというのが僕の考え。何も気にせず、自分が素直にかっこいいと思うものを選んでほしいと思います。ただ、どんなことでも知識量に比例して楽しくなるもの。店員さんをうまく使うことをおすすめしたいですね。
実際、僕も店員さんに話しかけて古着について勉強してきました。何も買わなくても、気軽に話をするためだけに立ち寄れるのが古着屋の良いところ。僕たちが聞かれたことをきっかけに初めて知ることもあるので、積極的に話しかけてみてください。
——今後、どんなお店にしていきたいですか?
雑貨も含め、お店に来てくれた人を驚かせるような、おもしろいアイテムがたくさんあるお店にしたいと思っています。洋服について詳しい人も、まだ何も知らない人も、一緒になって楽しめるようなお店にしていきたいです。
FRISKY
東京都目黒区上目黒2丁目44−10 サザンパレス1F
営業時間:13:00〜20:00
定休日:水曜日
Instagram:https://www.instagram.com/frisky_vintage/
Editor:Yoshihiro
ヴィンテージフリークのフリーライター。ファッションEC批評を中心にウェブメディアの幅広い領域で活動中。趣味はひとりで古着屋巡りをすること。好きな食べ物は、うに。
Photographer: 加藤遼
アパレル撮影、ポートレート作品を筆頭に幅広く撮影。
大学生活と並行しながらも、カメラマンとして精力的に活動中。
Instagram: @ryowonder